四巻之書

四巻之書 (しかんのしょ)

 [ 1.初巻 ] [ 2.歌智射之巻二 ] [ 3.第三之巻 ] [ 4.懸母 ] 

1.初卷


當願衆生百八惱煩無量重罪則時消滅我是誰未生以前本來面目一圓之中阿鑁以大圓學佛子々以我伽藍則是壽養信心安居常在於其中教行若座臥平等證知


日置流射形師弟子之起請秘記之事


三躰從父母讓强剛成不在我力强弱成不在我耻唯剛弱不論如修學水鉄唫水々流鉄とふしのきを削此心を知て剛は剛弱は弱と己々か分々に骨力を旨として嗜量を重師の恩ヘを信して剛を不猜弱を讒す正直を爲神法度に任て心底に治する者には可有相傳深服の弟子成とも道に愚か成異法に驚無心深は不可傳者也起請如件


七道


足蹈の事

一. 目中に用口傳又は蜘蛛の尺と云心は蜘の家を作らんとて追風を請て向の木にと雲にも目を付て吹付らるる義也闇夜のかねと云も同し口傳也


弓搆の事

一. 目中に用墨指と云心は矢をはめて弓と矢と擧と三つの中程に目中をする也m遠近に替有主の骨法に依て弓の立所に口傳是あり


胴造之事

一. 目中に用日月身と云心ハ我は大日如來とおもふヘし何處に恐る者もなき様に心をゆるりと筋骨も延ひやかに如何にも慮外成躰になし馬に乘眞の鞍の内の如し身形をけたかくゆくやかにして吉立ても居ても同心そ本より震搖矢藏にても又は船中にても用そ猶口傳灌頂の卷に有之也


引取の事

一. 目中に用口傳烏莵の梯と云心ハ烏はからす莵はうさき也弓舉を烏と云掛擧を莵と云故に矢を掛橋と名付けり左右直成を掛合とは云儀也矢筈上下に口傳有之也

歌に

 打渡す烏莵の掛橋直なれと
    引渡すには反橋そよき

弓に二度の反橋と云に直の反橋是也口傳万々有之也


打起の事

一. 目中に用弦道と云心は時の手の裏に何れにても相應の掛にて弦道を造るへし剛の弓懐掛の弦道と云て又爰に猿臂の射とて大事の重有也則日本記明衡徃來と云書物に露也是ハ弓懐に口傳多是に附て弓懐弦道に様々の口傳强有之態灌頂の卷殘子細は弓誠學なれは不被成義也不被成事を爰に云ては誠弟僞と思故也


會の事

大事の口傳也
一ニ. 一文字 惠 休 善 力 口傳大事也
二ニ. 十文字 此十文字は惣躰にも口傳有之誥の十文字共云儀也


離の事

一. 目中に用四部の離と云心は四所に有そ先條の五部の誥を一所を楔と心得て四を石火の如く出に離を四部離そ是は惣分の離そ又爰に

 切 拂 別 券

此四つに口傳有之皆了簡の離そ鸚鵡と云は掛の離也此鸚鵡に四つの字の心を付て用事種々様々口傳有之此次に未來身と云事有之扠社父母の収リ未來身とて離の前と離ての後との骨法を能々心に知る事肝要なり口傳有是是七道の七重とて大事の重そ大形は是を頂上共可心得儀也


骨相筋の事

一. 心と七道の五部の誥又は始中終の骨法射形に延て不縮を骨相筋と云ふ儀也矢束も爰にて知事也

 引矢束ひかぬ矢塚に唯矢束
    三つの矢束をよく口傳せよ

 口傳せよ矢束と鞭と力皮
    長きをハ次短をきれ

右大事の口傳に有是也


手の裏の事

一. 心は五ヶと云又吾加とも口傳大事也
一ニ. 鵜の首浮たる也 定 惠 善の三指に口傳鸚鵡の離口傳也
二ニ. 鶯中輕し 定と 神力の三指に口傳有是なり


剛弱の事

一. 心は惣躰に用といへ共第一先擧と脈の間を專にす然れ共押過ては下ヘ弱後ヘ過ては弱前ヘ過ても弱上ヘすきても弱也前條吾加を能々心得て四方弱みなき様に修學可致至ては呼立たりに當る掛へ心を不通離を用そ强弱も口傳有之也


懸合の誥の事

一. 是は矢束に用義也口傳大事又楔と云躰に定是ハ誥の楔也口傳離の楔と云は過て四方へ碎て散如し矢束の楔とは能程にしまるそ二ツ楔とハ是也


弓之威矢之積の事

一. 心は弓と矢と相刻相生を知る事也弓と矢と相刻して不被掛合時の目中遠近に用そ口傳矢尻をかむと云本説有之灌頂卷に顯秘事也誠學の人は聞ても不可耳しる也誠學に知事也


弓脈の事

一. 遠近を知る心は長短の息見越の金と云事目中の大事是も誠弟の人は合點難有修學至ては覺る事也誠學の人我不修して愚成をは夫れ師のヘを疑事是多し奧儀に神道を修す神道と云は日本の初る時神の約束也其支證は神道を請て行に地獄の如に煎上る湯に入ても又ほのをの中ヘ入ても不被苦事也禰宜御子の小女其外愚成者も受ぬれは以行智也日神月神云おし給ふ約束もおなし天地草木有性非性も約束の不違分は末世迄も疑事なけれ共人間の能々は皆相違して捨れたる故に心の不届人次第々々に道に遠成修學とけすして眞中より草臥て不至也若干人の内に壹人も稽古修學達たる人あらハ遠近の目中も矢早も秡矢も遠矢も心の儘に可成漢之漢白は二百歩の眞中小川を隔て双方より矢を離て眞中にて矢先と矢先射合て後漢之射矢先を漢白喰留て其矢にて漢之を殺して有そ楊由も是にもおとらす其外是程の名匠は多かりつる日本にては高野山弘法大師奧州ヘ御修行の時下総國野中にて虚空より聲して弘法々々と呼たりけり折節陰在離覺とて弓の上手通合て射て落す其外六十余洲に上手の手聞多かりし是皆五道修學仕修之事也不可疑可秘々々


竪臥之二義の事

一. 竪は剛し遊弓に用也臥は眞の弓に叶此二ツの心を能々心得て稽古可有也紅紫の口傳と云事も有之也


目付の事

一. 雪の目付と云事有之口傳萬々也亦おんしやうやからは羅こに目しゆと云事有是は蚊の目毛に巣を掛て世を過る少き虫有此虫を羅こ界の人の身へ放て見れは餘り大さに目しいて不見又爰に蝸角の民は鳳凰に目しゆと云も是も同し心也此心ハけしの粒なり共其内に目中をする心そ口傳の中の是は奧儀そ他流に中り擧と是を云義なりと云々


矢束の事

一. 先條に三つの矢束とて爲注斗也眞實は一つならてはなきそ修學の位に知そ引かぬ矢束は長そ骨相筋道に附て引矢束は五部の誥に附そ短そ唯矢束は世間の事そ口傳能々可有如斯何ても目師の位稽古上にて能々究て吉


皮肉骨の事

一. 萬事用事也人の骨と力と弓と矢と皮の人には皮の事肉の人には肉の事骨の人には骨の事也右の重の能々口傳可有弓の位を収る處も同事就中皮肉の九勘と云事有之重の口傳也


始中終法度の事

一ニ. 中の意趣ハ七道有之
二ニ. 矢早は剛を專とす也
三ニ. 通り心鉄の位也
四ニ. 遠矢曲也クル身反橋と云義也口傳有之
五ニ. 花形直に美射事也

布て初心の部に歸す能々口傳可有世間に弓稽古の人師をョヘといへとも此法度を立て傳る人ハ稀也先世間に的を射れは手前の花形不叶手前の花形を射とすれは的に不中と見ヘたり當流には初手の足蹈より始て目中と教ての紅葉重に至迄少も中を殘事なく稽古して社自師賢學の位に至間的を射共生物を射共其外の目中に會て社中も花形も同相調物なれ弓の情と云は中也不被中鉄壁を十重通ても用に不立遠射さしても不入者也弓の本地と云は中て矢早を本とす當世は遊興まてを稽古して本眞實の義は薄しさありとても相搆て々々法度を破て不可相傳者也


占掛合の事

一. 弓能射人弓を爲師と云詞にて可知是は彼離覺か詞也万事に强用と取分弓道に專一と云々


五重十文字の事

一ニ. 弓ト矢ト十文字
二ニ. 手ノ裏ト弓ト十文字
三ニ. 懸ノ大指ト弦ト十文字
四ニ. 胴骨ト肩ト十文字
五ニ. 胸筋ト矢ト十文字

右五重十文字と云て一大事の口傳也


七障

喜(キ) : ヨロコヒテ心ヲヤフル
怒(ト) : イカツテカンヲヤフル
憂(ユシ) : ウレイテシンヲヤフル
思(シ) : ヲモウテヒイヲヤフル
悲(ヒ) : カナシミテ大チヤウヲヤフル
恐(ケウ) : ヲソレテジンヲヤフル
驚(キヤウ) : ヲトロキテ大チヤウヲヤフル



右四卷書終初卷  關口源太 明治廿七午年三月吉日

2.歌智射之卷二


一段

 能引て引な抱よ手もたすと
    離を弓にしらせぬそ世き

能引て引なと云は過て無理に引なと云事也抱よとは人の物を預りたるやうに大事に掛て能取置たれ共乞時は安く返す様にと云事也たもつとは収て返しかぬるをたもつとは云儀也則離を弓にも身にもしらせすと云て唯おのつから離たるは吉依之離とは云儀也

 矢束程引て味へ心なく
    弦にひかれな腕の力よ

矢束程引とは始の大事也口傳有之味へと云事は弦に引るなと云事にて知る也腕の身力も掛斗りにてなしに腕力を添て引と云心也口傳も多之七道の内に大形有之也

 身のたけに餘る矢束も不足も
    有やなしやとあらそいなしそ

身の長に餘る不足の事奧儀に知る事也まつ能様に射て如何程も矢束を引せて矢をそたてて吉此三首の理を能々口傳して輙奧儀を不可免者なり


二段

一ニ. いか程も剛きを好め押力
    引に心の有とおもへよ
二ニ. 打起引にしたかひこころせよ
    弓に押るなおもへ剛弱
三ニ. 弦煙龍田の山の紅葉はを
    顔に散すな息のつまるに
四ニ. 息相はさとりの道の中なれや
    有無の二つハ目中にそよる
五ニ. 皮肉骨弓に有也人にあり
    矢にも有なりよく口傳せよ

一. いか程も剛を好めとは大三との心也弓を引と心得たるハわろし押を大め引を三分一との事也他流に引分と云事を當流には大三と云儀也


二. 打起引にしたかひ心せよ弓に押るなと云も大三の心又は剛弱の心擧口の口傳多是能々教傳可有之と也


三. 弦烟とハ歌の云掛なり息込と云事を辞故に如此様々に口傳有之委に灌頂の卷に露奧儀也


四. 息相は覺の道の中と云は有無の二つなり目中に依ての事口傳有是


五. 皮肉骨と云事万事用儀也一つ一つ口傳すへし口傳によりたんれん有此五首輙不可免愚成人に傳れは弓に射ころふ者也可惜々々强然惜にあらす前學を堅固にして後に可傳と云事也


三段

一. 口傳せよ押ていたすらに引無u
    父母の心をおもひやるへし
二. 剛は父緊は母なり矢は子なり
    片おもひして矢はそたつまし
三. 打起引ぬ矢束を身にしらせ
    胸より左右へ延て離れよ

一. 口傳せよ押ていたつら引無u片心なくとは骨にて引分よと云事也大三を意得して道を能々合點すへし骨を引と云事口傳の中の口傳也


二. 剛は父緊は母なり矢は子なりと云事は右の重に同様なれ共此歌の心は矢に聲を掛て聲と筋と肉とにて矢を送る事知る可秘々々


三. 打起引かぬ矢束を身にしらせ胸より双へ延る心は離の前とおもふへし延て延てとおもふ心吉此三首重の大事也夢々輕く不可傳我知たる能は澤山に思物なれ共扠社起請を師より書て卒爾に可傳との事也此流は世に大切の儀也可秘々


四叚

 聲は唯弓によりける物なれは
    きり聲も吉かけ聲も吉

切聲も懸聲も吉と云事は延て掛る聲は切こへにして吉聲は五藏より出る物なれは若々聲に掛しろい離に當りてつかへは懸聲にすへし掛聲共後息共云て重々の大事也他流にヶ様の事を不被知也是は離をそたつる義也弓に聲様々の口傳多し生コ昔弓に聲と云事はなし或時百路掛をつくるとて時の調子を弓にて取事を政次と云人仕出てより次第々々に世に至て弓聲に取て用事なり則時の調子に掛子細有是と重の重也大事と意得て輙不被免殊更口傳も是多し猶灌頂之卷に露也


五段

一. 口傳せよ矢束と鞭とちから皮
    長きをハ繼みしかきをきれ
二. 出るとも入とも月をおもひなハ
    引弦道にまよふへきなり
三. 押引と繼めなみせそふしの山
    みねと胸とはひとつなりけり
四. 楓秋の木末そ冷しき
    紅葉重に嵐ふくなり
五. 朝嵐身にはしむなり松風は
    目には見へねと音は冷し

一. 口傳せよ矢束と鞭と力皮の歌大事是は引矢束の事そ主の好と所作に隨て切ても繼ても能物そ此重は至て自師の位にて定儀也我と射覺て極る法也可秘々々


二. 出る共入共月をと云心は手の裏を取てより正路にする也万々也此歌の口傳は佛説にも過たる事そ秘して不注口傳の中の重なりと云々


三. 押引と繼めなみせそと云心は頂と胸と同し心にと云事そ中高と云もいほると云も同し心そ口傳のやう万々也


四. 楓秋の木末そ冷しきと云心は先楓は春夏也春夏は万木色々に花咲美しけれ共秋の末には皆散果下には紅葉重て木末をみれは嵐にふけてすさまじけれ共下には紅葉重てあれは美敷事を仕懸て枯たる木の如き成る心也万事の能に此心有書筆の道にも大唐之即之王義之日本にてハ高野山の弘法大師佐理行成ク道風抔の筆道の秘事にも此紅葉重の心を弓道を取て書たる爰に秘建之文有能不仰也心


五. 朝嵐松風の事能々仰に不及風躰の心也不云いへ共此説一段深し深心としたる躰と颯々としたる躰との心有無の二つ也口傳の様大事也餘り々々爲秘故に異名付て云也何れの儀にも名を替て秘して云事多是皆以方便の異名とて不驚心肝要也々々


弓稽古の人起請の端作

一. 高山に推車に口傳也
二. 玉竹の遊口傳也
三. 神爾口傳莫太也

此三ヶ條を心底に合點して後に師弟の望あらは一つ一つ可相傳有者也相搆々輙師弟の契諾不可有付道は道の達者より出る稽古は信より起る稽古より鍛錬は出る鍛錬より奇持は起る奇持より神變は出る神變より不思義は起る不思義より妙は起る此妙に色々口傳してかり初に不可有隨て名人の始に千里の行ひ道も一歩より始るを云説能々可聞収て釋伽大師も祖師も名匠も名人も生る時は別の所なし賤も貴も甲乙共に皆一つ也竝て二つなし難生世に出人男を請て習學の道に不事行は口惜々々付紅紫の二字と云事ゥ事に難用と殊更弓道に用也紅紫と云は人の名に似たれ共此歌にて可知也

 一入は薄くれないに生れきて
    千入になれはむらさきの雲

 朝夕に柴の庵にたつけむり
    いつ紫の雲となかめん

此二首能々可聞稽古の心に様々の唫多是とみへけり道に爲入歌也能々知たる人に聞ハ佛道に近きそと云々



二卷の終  關口源太 明治廿七午年三月吉日

3.第三之卷


一. 万事に中王と云事可心得也先四方を取て中王を加て五形と云五味共云義也五つの味也色も五つの色を合て黄の色也是中王也矢の五形も是に有掛合矢筈に口傳万々也五方の事なりと云々


一. 三合三つと云一大事の口傳也
一ニ "身" "弓" "意" 之三合能々口傳也
二ニ "弦" "弓" "箭" 之三合口傳也

右六字の理を能々可有修學右の口傳心を 思 無 邪 の三字と名付てゥ法に出せり口傳有之


一. 両部と云事は日月也日月と心得ぬれは無果口傳そ先両部とは二つの擧也胎金と云心也此二つの舉を合て一つにすれは人の心に依てしゆみせんと如成山には様々の物種有善惡の二つ爰にて可修學有是を日本の事に取て富士山と云り是歌智射の内に見へたり口傳無果事也云々


一. 五上七道は人間の大躰也家に柱立也神道には正直也佛道には五戒と慈悲也以是を万事に調事也離は會者定離そ口傳万々有之也云々


一. 十上と云事は人間の思ひ出を極て榮花に募を云り是ハ弓の十段窮を取て十成と云を學ひて云付たる詞也弓の奧義に至るを十成共又は十上共云也何れも一つの云也弓より爲出云そ口傳の様莫太也云々


一. 十段之位一つ欠てもせんなき事なれ共知人少し修學する人は稀成此十叚と云ハ奧の十段也口傳大也云々


一. 二十五有と云事是は法度手の裏掛稽古の五重十二字との事也是を叚々に能々からして學事云々


一. 六道と云て弓に苦身有輪廻の弓難事行
一. 地獄とは苦敷弓を云儀也
二. 餓餽とは强骨を弱く扱て力なき故に悲き弓を云儀也
三. 畜生とは矢束を無理に引たかり上手の事を急く似たかるを云儀也
四. 修羅とハ無理に剛をあらせて位へ遠きを云儀也
五. 人道とハ餘々緩々とのひ勝に斗り心得て是も位へ不被付を云儀也
六. 天道とは餘り美敷射る事斗をョを云事也

右之六道に迷病は草菅勝穀にて可唫口傳也云々


一. 冷 熱 浮 中 沈 片 身分 無性 三病此十脈を能々分別可有凡日の下に人間の數千万億那由佗恒河沙と云て無果事なれ共同面二つなしされは責て廿五有と今の十段を形取能々分別して木火土金水の五行に居て 酢 甘 苦 辛 鹹 味に射させて社其主々の心に合然して奧儀に至て能射手なれ弓射の十段も位の十叚も不辨漸五身七道繫剛弱矢束抔を指口に覺て射には三病五緩とて何れへも不片付也是を柳は拷ヤは紅佛祖不傳不立文字に片付事也七障六いんの口傳多是


一. 醫師評定の肝要に好物にやつれ嫌物養と云事口傳中肝要也


一. 眞實と云事有之正法をそたつる事なり正法と云は五上也弓の五味也是を直に養て賢覺に至れは實と成實と云は花の後に眞の成事也


一. 揚由か大木の矢と云も掛合五方に有是


一. 左斗退延の二字能々口傳可有退め指矢遠矢に吉延目的射通手前にも吉也と云々左斗とは剛弱の留り也口傳の様莫太也云々


五輪碎と云事

一. 土躰黄色中四角と云事は先足踏を如大地の踏て又中四角と云は胴骨肩の口ひすみなき様にと云事也


二. 水躰K色北圓形とは水の器に隨ふことくに弓の中へ眞丸に割込扠弱き所へ剛き筋骨を水の如流に引込扠離は露なとの落る如に眞丸にとつとつと離事也と云々


三. 木躰色東圓形是は右の丸き大躰を仕覺て扠春に至て草木の枝榮花如咲に拳形掛形顔持を直事成と云々


四. 火躰赤色南三角是は右の花咲美敷事を仕懸て扠實の如成に弓をも三角に取五躰をも相生に搆剛身をあらせて石火の如出に弦烟を立て離す口傳也と云々


五. 金躰白色西半月是は又右の叚々を仕懸て弓手も妻手も三ヶ月形に先拈になし扠いかにも能刃金を能鍛て剛ハしかく晴て輕き刃金抔如打折に離す口傳也


右の五位を五輪碎と云て一大事也口傳莫太也と云々


一. 中神ヲ不修射は闇天ノ如飛礫
一. 奧義ヲ透タル藝ハ雪中ノ老馬ノ似知道
一. 骨法不行射ハそや如驗少風
一. 射學ノ達タル者ハ向大礒似龍乘雲ニ
一. 利邪情藝ハ技榮葉繁根淺如樹
一. 知惠厚藝枝葉薄根深似森林ニ
一. そ射ゥ段ハ取耳似猪鼻
一. 深信持律弓人日月遊行和朝如出虎
一. 十能七藝ハ人間花弓馬能修透成實助身命
一. 自力射修ハ雨水無道如損穀
一. 習射法コ露花有惠似攝F
一. 無骨弓師似治猿猴疵
一. 鍛治教藝如作蜂巣
一. 利疎吟如梅枝鈍座厚似楠枝
一. 千兵安求自分射一將難求一張弓


 トクトクト落ル岩間ノ水ヨリモ
    ハヤキ流レソミナトニハツク

此歌の心は鈍知老若氣の淺深に隨水を流すは義の上手下手の心を注也此本説は少蟻大堤を曳と云本意也と云々


一. 武田小笠原二流本とす隨分可修學左有とても此日置流には射手の肝要とて家風に不順事也依左有一切他流の筋を不承合儀也と云々
一. 水に四見の不同有と云事大事の口傳也此心は天瑠理莫宅人水餽火口傳可有也
一. 夜受てしやくまくと有遠山の曉一聲の郭公雲外に聞本源を射透す一張の弓
一. 武士の射矢は誰そ郭公心を透す夜半の一聲



三卷終  關口源太 明治廿七午年三月吉日

4.懸母


父母大三の事

剛父

一. 心は引に推と引と両方の氣味そ推大目引を三分一との事そ是に種々の口傳有之又此次第に五部の誥と云事有之五所の骨相肉身に口傳又此次に父母の収りと云も同事なれ共少心か替そ則比人双の心そ此比人双に色々に口傳有之父母大三より始て五部の誥父母の収比人双此四つの心を能修學してこそ矢束はみへたれ爰に矢束の口傳有之奧儀に露事也


會の事

一. 右に一文字十文字と云事二つの掛を爲驗斗也
三. 弦搦の口傳弦道の能也
四. 淺深口傳人に依時々矢數に用也
五. 弦斗遠矢の口傳也
六. 腕力の事万々口傳也
七. 一騎當千口傳莫太也
八. 大將   口傳
九. 剛無理  口傳


嫌好の事

心は惣躰に難美と弱けれは嫌也
難賤と剛けれは好也難剛と不延縮むを嫌也難細と不縮延を好事也


右醫師評定牛角の療に露口傳万々也


手の裏の事

一. 是も右に鵜の首鸞中と云て二つの手裏を爲注斗なり
三. 三毒剛し上下開閉に口傳三コと云はとんよくしんいくちの事也口傳可知也
四. 骨法陸也ゥ法に渡口傳也
五. 呼立たり弓の起請と是を云儀也走て二度乳子に成と云事也從是始也矢のゥ病此一つにて治る也其外奧儀に露事也右重そ牛角の相應とて皆療法の部也重々に口傳可有義也と云々


弦の収矢の別の事

一. 先條に呼立りと云手裏弦道弓の高尺所に鸚鵡の離にて何心もなく初に離たるの弦の収りにて有そ是に口傳様々多し一大事と可秘々と也矢に別と云事は弦の收り時別に矢に隨て遠速有能々口傳に有之此矢の別に柏子と云事有之息相の柏子と云又はしつへいの柏子共云儀なり彌口傳是多し也


相剋相生の事

一. 一ニ 弱き弓に重箭
一. 二ニ 少き弓に太弦
一. 三ニ 餘力に細き矢の事

右此三ヶ條を難注能々可有口傳者也


檜垣十文字の事

一. 目中に用心は立なる物には檜垣に弓を推當て吉横成物にハ十文字に弓を押當て吉以猶口傳多是也


三擧と云事

一. 是目中之大事重の重也寢々小法師と云儀也此心は乳子の守する者子を寢さする心を唫なり口傳様々有是は當流の中物の一事可秘肝要也


意念の事

一. 防風雁金の骨に   口傳
二. 氣延矢に氣を付て見送口傳
三. 眼情目は五藏より生たる故に注口傳也
四. 金目扇に唫口傳是多し
五. 高越敵相に用口傳也


聲之位の事

一. 切聲 掛聲 皮肉 息相 後れ息と云て五つ有何も大事の聲也弓に依て可懸口傳也歌知射部に大方有之灌頂卷に委露也附時の調子の事


絹綾錦の三叚の事

一. 修學自師の位に至は知事也口傳莫太也と云々


經の段の事

一. 心は万事の堅貫の事也取分絹布に相應の竪の貫にて弓の事に經の叚と露吟事多是委は灌頂の卷に注也


十二字五意の位の事

一. "父" "母" 人しけれは子の成人急なり
二. "君" "臣" 直なれは國ゆたかなり
三. "師" "弟" 相生すれはゥ學長高也
四. "鉄" "石" 相剋して火の出事急なり
五. "老木" "晴嵐" 紅葉散重なりて冷しし


右の五道口傳の様一大事也と云々


離の事

一. 先條に 切 拂 別 券と云て四つ字を爲注斗也
一. 切と云は切離也是は射通物に吉離也口傳
二. 拂と云は拂離也此心は遠矢に吉離也口傳
三. 別と云ハ別離也是は損矢に吉離也又手前にも吉口傳
四. 券と云は堅離心也是は中物に用口傳也能々教傳可有之と云々


五部の誥の事

陰   爰にて詰を剛の詰と云儀也
  肩 爰にて詰をき肩の詰と云儀也
胸   爰にて誥を胸の誥と云儀也
  肩 爰にて誥を右肩の誥と云也
陽   爰にて詰を腕力の誥と云也

右五部の誥と云儀也一大事の口傳也と云々

一. 剛の緩と云は推手の裏又ハ舉の緩也剛の誥にて可直口傳也
二. 繫の緩と云事妻手の緩也腕力の誥にて可直也
三. 肩の緩と云事左の肩の詰にて可直也
四. 右肩緩と云事右の肩口の緩也右肩の誥にて可直也
五. 胸の緩と云は胸にて緩を云也胸の詰にて可直也


右五緩と云儀也何れも五部の誥にて可直口傳也


四部の離と云事

一. 是も右の詰を眞中に水の心を持て五藏五躰の情を胸に収て其色を合て見れは紫也此紫の胸の内へ大石を如打込に離の心を付て双四つの搦たる物か一度にさつと切て離心そ是を紫部の離とは至ての心也此心を覺ぬれは弓道心の儘に叶也


牛角の療と云事

一. 牛には角に勝たる物なし然共五躰弱けれは見事成角は不入物也弓の療に射形も美敷見所は能様なれ共五かくの療をも不辨射事を嫌也唫は牛の戦に角は見事なれ共其牛弱けれは負也角は弱けれ共其牛剛けれは勝也以爰を牛角の療とは云儀也牛馬人間皆藥を用て病を愈すは醫者の骨也牛馬人間の大成五躰に藥種一朱一毛の輕き以重を加減して病を如愈七道より初てゥ勘を揃て弓の眞行草を仕立たる事皆以如藥種の藥傳の法は天笠より弓の療より始也其後藥師佛出生し給へて藥と云事を出來たれ其先は弓療の人の名を奇妙と云つるか藥師佛出來之より藥を以て病を愈す人のを醫師と云事も始る也弓の師は奇妙也藥師は醫者也日本に弓師を奇妙と云事を不扱故に奇妙の沙汰を醫師評定とは注したれ奇妙と醫師ハ其位尊事難注依是奇妙の人は我身を大日覺王と崇藥師の人ハ我身を藥師如來と崇とや次村上天皇の御代に吉備大臣歸朝して弓に八掛と云事を印たれ共餘言多けれは當流には略是を定て他流には可用哉返々弓の療は病人の藥種と可心得事肝要也可信々と云々


弓の文の事

一. 先條に 絹 綾 錦 又は經の段と驗たるは同様にて利なり心ハ五躰の筋の十王むくうに入違たるを我と自師に習て弱所へ剛筋を引張也弓に 冷 熱 平 三張 の弓皮肉骨の九勘に合て加減して賢覺に可収口傳多之心は風は威て長閑に成也深信としたる心と颯々としたる躰との心能々口傳可有裏表を知事肝要なりと云々


十八界と云事

一. 七道ゥ勘悉皆覺して一尺八寸に誥是は小間の口傳と云


剛々正直の事

一. 一大事の口傳そ大形此歌にて合點可有

 千万の其斷は剛弱に
    直に射させん爲とおもへは


一. 一分三界と云目付の事口傳之様万々有當流の一大事の目付也


當流奧儀位の究の事

一. 六四雀積一町三尺十段百手


弓縁之五コの事

 年コ位 習コ位 見コ位 身コ位 意コ位



四の卷終

上に載せてある文章は、国立国会図書館デジタル化資料に公開されている「四巻之書」(関口源太編/1894年11月18日発行)の本文全文をフォント化したものです。変体仮名・合略仮名を現在の平仮名に改め、漢字を一部使用可能なものに替えてあります。


約30年後に発行された「四巻之書」(柴田勘十郎編/1925年5月25日発行)はこれの転写であるので体裁・内容ともに全く同じですが、各巻末の名前と日付を「體勇社 柴田勘十カ 大正十四年五月」に変えてあります。そして以下のような写植ミスを起こしています。

第二巻「五段」項の解説一 : 正「我と射覺て」→ 誤「我を射覺て」
第三巻「五輪碎と云事」項の後 : 正「射學」「利邪」→ 誤「利學」「射邪」
第四巻「弦の収矢の別の事」項 : 正「に柏子と」→ 誤「にと柏子」
第四巻「四部の離と云事」項 : 正「叶也」→ 誤「叫也」


2012.12記

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